
「毎晩、今後の生活のことが心配で寝付きが悪い」
「毎朝、起きるとお金のことで頭がいっぱいになる」
多額の借金を抱えてしまうと借金返済が中心の生活になってしまい、精神的な余裕もなくなってしまう。誰に相談すればいいのかわからない、どうやって解決すればいいのかわからない、という方も多いです。
債務整理は多額の借金に苦しむ人の悩みを解決するための法的な制度の一つです。
債務整理と聞くと自己破産を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、実は債務整理には自己破産の他にも任意整理、個人再生、特定調停の3種類の制度があります。
債務整理とは、多額の借金を負ってしまった方や多重債務の状態になってしまった方が法的な手続きをとることで借金を減額したり免除できたりする制度の総称です。
弁護士に依頼するもの、裁判所が介入するもの、自分で手続きをとるものなどがあります。
また、債務整理ではありませんが、過払い金請求と呼ばれる任意整理などの債務整理手続きをする時に一緒に行うことで払いすぎた利息を請求できる制度もあります。
まずは4種類の債務整理の種類と特徴を知って、自分が希望する債務整理方法を選ぶことが、借金の悩みから解放される第一歩です。
債務整理にはどんな手続きがある?
上記でも述べたように債務整理の手続きには4つあります。4種類の名前と特徴はそれぞれ下記のようになります。
- 任意整理→専門家と貸金業者との交渉によって借金を減らす
- 個人再生→借金を最大5分の1に減らせる
- 自己破産→法的な手続きによって返済を免除してもらう
- 特定調停→裁判所を通じて貸金業者と交渉する
4つの債務整理に共通するメリット・デメリット
4つの債務整理手続きはどれか1つが優れていたり、劣っていたりするわけではなく、債務者(お金を借りた人)の状況に応じた債務整理手続きが用意されているということになります。
なので、4つの手続きのメリット・デメリットを知ることで自分にはどの債務整理手続きが最適な方法なのかを知る必要があります。
最適な方法がわからない、どの方法が自分に合っているかわからないという方は専門家に相談することで自分に最適な債務整理の方法をアドバイスしてもらうことができます。
債務整理手続き全てに共通するメリット・デメリットは以下になります。
- メリット
-
- ・返済額が減額または免除される可能性がある
- ・過払い金が発生しているか確認できる
- ・取り立てや催促をストップすることができる
- デメリット
-
- ・信用情報機関(ブラックリスト)に事故情報が登録され、新規でのローンやクレジットカードの利用、申し込みができなくなる
債務整理をすると信用情報機関に事故情報が登録され、ブラックリストという状態になります。ブラックリストになると、クレジットカードの利用や新規申し込み、新規ローンの申し込みができなくなります。
4つの債務整理の特徴とメリット・デメリット
任意整理とは

任意整理は、債権者(お金を貸した方)と債務者(お金を借りた方)が直接交渉をして和解し、借金を減額してもらう債務整理の方法です。
貸金業者との交渉や手続きは債務者本人がおこなうこともできますが、債務整理の経験から交渉に長けている弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。
任意整理で減額となるのは借金の総額ではなく、今後支払う将来的な利息です。将来的な利息をカットしたうえで、借金を3~5年かけて分割して返済して完済をめざします。
その上で、過払い金があれば元金に当てることができ、元金を減らすことができる可能性もあります。
任意整理のメリット
任意整理は裁判所を介さず、債権者と債務者間で交渉をします。そのため、ほかの債務整理のように財産を手放さなければならない、資格制限を受け就ける職業が限られてしまうといった制限もありません。
また、任意整理では借金を整理する借入先を選択できるので、保証人付きや担保付きなどの借入を外すことも可能です。
保証人へ迷惑をかけたくない、ローンの支払いが終わっていない住宅や車を手放したくないときにも選択肢となります。
任意整理のデメリット
任意整理のデメリットは、任意整理自体に強制力がないことです。そのため、債権者側に和解に応じてもらえないことがあります。
和解に応じてもらえない場合は訴訟をになってしまうこともあり、ほかの債務整理方法を選択肢に加えることが必要です。
また、任意整理でカットされるのは借金総額ではなく将来的な利息です。そのため、ほかの債務整理と比べると減らせる借金の金額は少なくなっています。
減額後の借金自体は3~5年間で完済を目指さなければいけません。
また、ほかの債務整理と同じく、信用情報機関に事故情報として登録されます(ブラックリストに載る)。
借金の完済から5年程度登録されるので、ローンを組んだり借入契約をしたりできません。
- メリット
-
- ・財産没収がない
- ・整理対象を選べる
- ・資格制限を受けない
- デメリット
-
- ・ブラックリストに入る
- ・法的強制力がない
- ・減額対象が将来利息のみ
個人再生とは

個人再生とは裁判所に再生申立てをおこない、借金の総額を減額してもらったうえで完済を目指す手続きです。
再生手続きのなかでも、個人の借入に対する手続きのため、個人再生と呼ばれています。
個人再生は借金の総額を1/5ほどまでと大幅にカットできる手続きです。減額した借金総額は、原則3年、例外として5年で完済するために返済していきます。
個人再生のメリット
個人再生は、借金総額をカットできるので大幅な返済負担の軽減につながるのがメリットです。
裁判所を介しての手続きのため、債権者に対しての強制力もあります。
財産の処分の必要がなく、住宅ローン特例を適用すれば住宅ローンの残っている自宅も手放さずに住み続けられます。資格制限もありません。
個人再生のデメリット
個人再生のデメリットは、裁判所を介しての手続きのため用意する書類などの準備が任意整理よりも複雑ということです。
自分で手続きもできますが、手続きの手間や時間を考えて弁護士などを利用する人が多くなっています。
個人再生手続きをすると、官報に掲載されます。官報をチェックする勤務先の場合、債務整理をしたことがバレてしまう可能性があります。
また、官報を見た貸金業者から勧誘の連絡が入る可能性が高いです。
個人再生をすると、任意整理よりも長い期間事故情報として登録されます。10年間はローンを組んだり借入したりができなくなります。
- メリット
-
- ・大幅な減額が望める
- ・法的強制力がある
- ・住宅を残すことができる
- デメリット
-
- ・ブラックリストに登録される
- ・手続きが複雑
- ・官報に掲載される
自己破産とは

自己破産とは、裁判所に申し立てて借金の返済義務を免除(免責)してもらえる手続きです。
債務者の持っている財産を換金して債権者に分配し、残った分を免責してもらえます。
自己破産のメリット
自己破産の最大のメリットが、借金残額を返済しなくてよいことです。
借金の額が大きすぎて生活できない、返済できる見込みもない債務者の生活再建を目的とした債務整理のため、免責が認められれば借金の返済から解放されます。
借金の取り立てや給料の差し押さえなどの強制執行も止まるため、生活の再建に乗り出せます。
債権者に分配するために財産を失いますが、衣類や99万円以下の現金など、生活に必要と認められた最低限の財産は処分しなくて済みます。
自己破産のデメリット
自己破産をすると、生活必需品以外の財産を失います。
また、自己破産手続き中は引っ越しができない、郵便物をすべてチェックされる、公的な資格を使った職業につけなくなるといった制限を受けてしまいます。
自己破産手続きをしても、借金の理由や行為に悪意が認められた場合は免責が認められない場合があります(免責不許可事由)。
免責不許可となると、破産したことが市町村役場に通知されます。
自己破産手続きをすると官報に掲載される、ブラックリストに10年間載る、と個人再生と同様のデメリットもあります。
- メリット
-
- ・借金が全額免除される
- ・取り立て、訴訟提起が停止する
- ・給料等の差し押さえが停止・取り消しになる
- デメリット
-
- ・ブラックリストに登録される
- ・財産が処分される
- ・特定の職種に就けなくなる
- ・保証人に影響が出る
特定調停とは

特定調停とは、自分で裁判所に申立てをおこない、債権者と債務者の間に裁判所が介入することで借金の減額などを交渉、合意を目指す債務整理です。
減額後は、3年で借金を完済しなければいけません。
特定調停のメリット
特定調停は自分で手続きをする代わりに、費用がほかの債務整理よりも安くなっています。
弁護士や司法書士などの依頼料金がかからないため、数千円~で済みます。
特定調停のデメリット
特定調停はすべての手続きから裁判所への出廷まで自分でおこなうため、手間と時間がとてもかかるのがデメリットです。
もともと弁護士などに依頼できない人のためにできた債務整理の制度ですが、手続きにかかる時間や手間から近年ではあまり利用されなくなっています。
また、特定調停に介入する調停委員が債務整理にくわしくない場合、債務者側に不利になってしまうことがあります。
- メリット
-
- ・自分でできる
- ・費用が安く済む
- ・借金が減額できる
- ・債権者を選べる
- デメリット
-
- ・債権者からの取り立てが止むまで時間がかかる
- ・過払金の返還が受けられない
- ・差し押さえが簡単にされてしまう
- ・調停委員が債務整理の専門家でない場合がある
- ・調停が成立しない場合がある
過払い金請求とは

「過払い金」とは2010年以前に貸金業者から高金利で借入していた場合に生まれる払う必要のない利息のことです。
この金利を利息制限法と出資法の上限金利の差によって生まれた「グレーゾーン金利」と呼びます。
2010年の法改正によってグレーゾーン金利は禁止されましたがそれ以前に借入をしていた場合は過払い金を請求できる可能性があります。
債務整理では債権者と交渉する際に、専門家が利息制限法に基づいた利息で計算した場合の返済額を再計算します。
再計算の結果、残った借金を3~5年程度の分割払いで完済できそうであれば、任意整理を検討します。
任意整理で返済できそうにない場合は自己破産や個人再生を検討する必要があります。
過払い金を請求すると、返還金を借金の残額にあてたり、完済している場合は現金として手元に帰ってきたりします。
ただし、任意整理や自己破産、個人再生の場合は過払い金請求も同時にできますが、特定調停の場合は別途過払い金請求手続きをしなければいけません。
どの債務整理が最適な解決方法?
個々の事情や重視するべき、重視したい点によって、選ぶべき債務整理方法は変わってきます。
しかし、どのような基準で債務整理を選んだらいいのかわからないという方も少なくないと思います。
4つそれぞれの債務整理を選ぶ基準を見ていきましょう。
任意整理
- 過払い金返還が見込める
- 毎月安定した収入がある
- 家族や会社にバレずに債務整理をしたい
- 長期滞納して一括での返済を催促されている
個人再生
- 家や不動産など資産を所有している
- 安定した収入がある
- 元金だけで計算しても3年以内には完済するのが難しい
自己破産
- 借金の総額が年収を超えている
- 生活保護受給者である
- 病気やケガで仕事を始められない
- 裁判所から差押え通知が届いた
- 5社以上の金融機関から借金をしている
- 任意整理など他の債務整理での解決は難しい
特定調停
- 弁護士費用を用意するのが難しい
- 手間や時間を気にしない
- 借金の返済ができないほど経済状況が困窮している
個々の事情によって選ぶべき債務整理は異なるため、自分で全て判断するのではなく希望の手続きを想定した上で弁護士などの専門家への相談がおすすめです。
ブラックリストとは

ブラックリストに載ると表現されますが、「ブラックリスト」というリストが存在するわけではありません。
クレジットカードを作ったり、ローンを組んだりするときには、本人を識別する情報や過去のクレジットカードやローンなどの契約内容や支払状況といった信用情報と呼ばれる顧客情報が信用情報機関に登録されます。
一定期間返済が滞ったり、債務整理を行なったりした場合、その情報についても信用情報機関に金融事故の情報として登録されることとなります。
この事故情報が信用情報機関に登録されている状態のことを「ブラックリストに載る」と表現しているのです。
ブラックリストに載った状態になると、新規のローンが組めなくなったりクレジットカードを使用、契約できなくなったりします。
しかし、ブラックリストに登録された場合でも、永久に登録されているわけではなく、信用情報機関によって期間に差はあるものの一定期間が過ぎれば削除されます。