自己破産の条件とは?自己破産できないケースはある?

自己破産は借金を0にできる最終手段ともいえるべき債務整理方法であり、利用するには満たすべき条件があります。自己破産の条件を解説します。

自己破産を利用するための条件

自己破産を利用するための条件は以下の通りです。

  • 支払不能である
  • 免責不許可事由がない
  • 非免責債権ではない

支払不能である

自己破産をして免責になるためには、支払不能であると認められる必要があります。

支払不能とは、借金の額が収入や財産を上回っていて、何をしても返済が困難な状態です。

そのため借金の額ではなく、破産人が借金を返せる状態でないと認められれば自己破産ができます。

たとえば、借金が1,000万円あっても自宅や不動産などの財産を売却して返済に充てられれば完済できる場合は、支払不能ではないため自己破産はできません。

一方借金が100万円でもリストラなどで収入がない、給料が差し押さえられている、財産がないため返済が不可能な場合は、支払不能のため自己破産ができる条件を満たしています。

免責不許可事由がない

自己破産をすると、借金の残高の返済義務がなくなる免責を受けて借金が0になります。

ただし、免責不許可事由がある場合は免責が認められないため、自己破産ができないのです。

免責不許可事由とは、以下のものがあります。

  • 財産があるのに財産目録から外すなど隠した(財産の隠匿等)
  • 破産申し立ての直前にクレジットカードで買い物した商品を換金する、ショッピング枠の現金化をした(換金行為等)
  • 特定の債権者にだけ偏った返済をした(偏頗弁済)
  • 収入を大きく超える買い物や、過大な投資、ギャンブルによる借金(ギャンブルや浪費による財産の減少)
  • 破産申し立てをする1年以内に、所得証明書や身分証明書などを偽って借入をした(詐欺的な借り入れ)
  • 破産手続きを行う裁判所で虚偽の手続きや報告をした
  • 裁判所や管財人に協力しない

ただし、程度の軽い免責不許可事由は、裁判官の裁量によって免責が認められる場合があります(裁量免責)

たとえば、浪費による借金やギャンブル、投資による借金でも本人が反省していてしっかりしている、かつ破産手続きを受けるのが初回の場合は、裁量免責となる可能性があるのです。

非免責債権ではない

自己破産を受けて免責となっても、免責の効力が及ばない債権(非免責債権)があります。

非免責債権は免責とはならないため、自己破産をしても支払う義務を負ったままです。

非免責債権には以下のものがあります。

  • 固定資産税や住民税などの税金、健康保険税、年金、一部の水道代(下水道利用料金)など公的な請求(租税等の請求権や罰金)
  • 妻を傷つけるためにした浮気に対する慰謝料など、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権)
  • 暴力による被害者から加害者への損害賠償請求など(破産者が故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権)
  • 養育費や婚姻費用分担義務に基づく請求など(破産者が扶養義務者として負担すべき費用に関する請求権)

同じ慰謝料や損害賠償でも、非免責債権に該当するものとしないものがあります。

たとえば、危険運転による交通事故の慰謝料や損害賠償請求は非免責債権となり、支払いの義務を負います。

一方、わき見運転やハンドル操作誤りなど故意ではない交通事故の慰謝料や損害賠償請求は、非免責債権とならない場合があります。

また、税金は非免責債権のため自己破産をしても納める義務があります。ただし、分納や納税猶予申請、免除や減免制度があります。

自己破産と同じく、生活の立て直しのためにこれらの制度についても調べて活用してみましょう。

自己破産の注意点

自己破産をするさいに、条件以外にも注意しておくべきポイントがあります。

  • 資格制限について
  • 悪質な免責不許可事由は免責とならない
  • 多額の非免責債権があると自己破産は有効ではない
  • 自分名義の不動産は残せない

資格制限について

自己破産をしたあと、一定期間資格に基づいた仕事をしてはいけない、と定められている職種があります(資格制限)

資格制限に該当する職種は以下の通りです。

  • 警備員
  • 宅地建物取引業者
  • 生命保険募集員
  • 損害保険代理店
  • 証券会社の外交員
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 弁護士
  • 司法書士
  • ディスカウントストア、リサイクルショップ、質屋などの責任者 など

資格制限に該当する職業についている人は、破産手続きがはじまってから終わるまで資格を使った仕事ができません。

一時的に退職するか、資格を使わずに仕事をする必要があります。

悪質な免責不許可事由は免責にならない

免責不許可事由があっても、程度が軽ければ裁量免責によって免責が認められる場合があります。

ただし、以下の場合は悪質な免責不許可事由にあたります。

  • 免責不許可事由があることを隠した
  • 前回の免責許可決定から7年が経過していない
  • 7年以内に給与所得者等再生を利用して返済を終えた
  • 個人再生のハードシップ免責の適用を受けた

いずれの場合も、免責を受けても短期間で破産をしている悪質な免責不許可事由にあたるため、免責とならず自己破産ができません。

多額の非免責債権があると自己破産は有効ではない

非免責債権は免責の対象となりません。

借入のなかでも非免責債権が多数をしめている場合は、免責とならないため自己破産をしても返済負担がそれほど減らないことになります。

たとえば税金や年金の滞納を長期間している、暴力によって相手を怪我させてしまった慰謝料や損害賠償があるなどです。

非免責債権が多額ある場合は、自己破産以外の方法を考えたほうが有効な場合があります。

自分名義の不動産は残せない

自己破産は、破産人の持っている財産を破産管財人が調査、換金して債権者に平等に分配し、返済の一部に充てます。

住宅ローンが残っている場合は、抵当権に入っているため担保として没収されます。

自分名義の住宅や土地を持っている場合は財産として処分されてしまいます。

自分名義の不動産を残して借金を整理したいときは、任意整理や個人民事再生などほかの債務整理方法を考えることになります。

まとめ

自己破産は破産人の財産を処分して返済にあて、残債は免責となる効力の高い債務整理方法です。

そのため、手続きには支払不能であると認められること、免責不許可事由がないこと、非免責債権がないまたは少ない、資格制限の職業に就かないことが条件として挙げられます。

免責不許可事由に該当する借入があっても、裁量免責が認められる場合があります。

また、自分名義の不動産を残したときや、非免責債権が多いときは、自己破産以外のほかの債務整理を選んだほうが有効な場合があります。

自己破産をすべきか、ほかの方法のほうがよいかを迷っているときにも、まずは弁護士に相談するのが重要です。

自己破産手続きのうえでも、弁護士は強い味方となるでしょう。

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