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任意整理とは?

任意整理とは、弁護士が債務者の代理人として債権者と話し合う方法です。
債務者にとって無理のない返済計画への変更を交渉し、債務問題の解決につなげます。
任意整理をすると、月々の支払負担額の軽減が可能です。
また、手続きなどの手間がない、財産を残せる、職業制限がないなどのメリットも多いため債務整理のなかでももっとも多く利用されている方法です。
任意整理のメリット
任意整理には次の4つのメリットがあります。
- 返済総額を減らすことができる可能性がある
- 元金を減らすことができる可能性がある
- 3~5年で借金を完済できる見通しが立つ
- 業者からの催促が止まる
- 自己破産や個人再生よりもデメリットが少ない
一つずつ詳しく解説していきます。
返済総額を減らすことができる
任意整理によって返済総額を減らすことができるのは、将来利息、遅延損害金をカットすることによって本来の借金である元金だけを支払う形となるからです。
将来利息とは、借金完済までの期間払い続けることになる利子のことです。消費者金融で借り入れをする場合、その年利は15〜18%に上ることもあります。
また遅延損害金とは、期日までに返済できなかったことに対する損害賠償金のことです。およその消費者金融では年20%の利息として加算されます。
利息については「利息制限法」で金利の上限を15〜20%とし、それを超えた利息は法律上無効であると定められています。
任意整理を行うことで、法律上本来払う必要がなかった分の利息を明らかにすることができます。
算出の結果過払い分がなかったとしても、弁護士により返済が可能な範囲の利息カットを行えないか交渉してもらうこともできます。この和解の結果は債権者が応じるかによりますが、交渉の価値はあると言えます。
元金を減らすことができる可能性がある
任意整理を行うことにより、利息だけではなく元金そのものを減らすことができる可能性もあります。
これには上記の「過払金」と関係があります。
任意整理では過去取引開始時にさかのぼり再計算を行います。その際に「利息制限法」の上限を上回る過払いが過去に行われていたことが認められた場合、その分を元本に充当させることができます。
結果として元金そのものを減らすことができるのです。
将来の利息をカットするだけではなく、払い過ぎた分を返還してもらうことができるので、知らずに「過払い」をしていた方にとっては大きなメリットがあるといえます。
3~5年で借金を完済できる見通しが立つ
任意整理を行うことにより、終わりの見えなかった返済計画に目処をつけ、多くの場合3〜5年の完済計画を立てることができます。
多くの場合任意整理では、借金の元金だけを3年〜5年の分割払いで返済するという和解案で交渉します。
法律の専門家である弁護士が間に入り交渉にあたることで、利息カット等債権者との和解がしやすくなります。
現在も継続した収入がある方にとっては、今までの返済の苦しさは利息によるものであり、元金だけの返済であれば3〜5年の分割は無理のない範囲の計画と言えるでしょう。
それで、任意整理を行わずそのまま返済を続けた場合に比べて、生活に支障のない現実的な計画を立てることが可能となるのです。
業者からの催促が止まる
返済計画が楽になることの他に、大きな精神的メリットがあります。
それは弁護士が間に入ることにより、貸金業者が直接本人に請求をできなくなるということです。
任意整理を依頼すると、弁護士は「受任通知」という書面を債権者である貸金業者へ送付します。
そうすると貸金業者側は電話や郵便物など、あらゆる形式の取り立てを行えなくなります。
これは借金から来る心理ストレスを軽減する上で大きなメリットであると言えるでしょう。
自己破産や個人再生よりもデメリットが少ない
任意整理は弁護士が間に入り借金の解決を図る
「債務整理」の方法のうちの一つです。
債務整理には他にも、自己破産や民事再生といった方法があります。これらの方法はどれも裁判所に出廷する必要があり、時間も費用も多くかかります。
それに対し任意整理の場合は弁護士と債権者との間のやり取りで手続きが完結できるため、時間と費用の負担が少なくなります。
また、自己破産の場合は家を回収されたり、職業の選択に制限がかかる場合もありますが、任意整理にはそのようなリスクがありません。
任意整理のデメリット
任意整理はいくつかある債務整理手法の中で最も利用しやすく、通常は借金の返済が難しくなってきた時に最初に検討される対処法です。
ただし、利用者にとってのデメリットもいくつかありますので、本章で見ていきましょう。
ブラックリストに5年間登録される
任意整理のデメリットの一つに、一定期間ブラックリストに載ってしまうというものがあります。
ブラックリストとは、返済を遅延させるなど事故実績を持つ人物を登録したもので、登録された人は一定期間金融機関との取引が制限されます。
具体的には、借り入れやローンを組むことができなくなる、クレジットカードの利用を制限されるなどの影響が出てきます。
ただし一生涯そのような制限が続くわけではなく、任意整理を行った事実がブラックリストに登録されている期間中だけで、その目安期間は約5年です。
登録される信用情報機関の種類によって、以下のように扱いに多少の違いが出ます。
①JICCの場合
主に消費者金融などが加盟するJICCでは、債務整理を金融事故の一つとして登録する項目があり、任意整理の通知を受けてから5年間登録されます。
②CICの場合
主に信販会社が加盟するCICは、任意整理を事故として直接登録する項目が無いものの、任意整理によって保証会社が代位弁済を行う際に「異動」の扱いとなり、その事故情報が契約終了から5年間登録されます。
③KSC
銀行が加盟主体となるKSCも任意整理自体の登録項目はないものの、任意整理により保証会社が代位弁済を行うとその情報が契約終了から5年間登録されます。
任意整理を行うと保証会社による代位弁済が行われますから、どの信用情報機関に登録されるとしても、ブラックリストへの掲載は「約5年」が目安になります。
代位弁済がされた後は、債務者は保証会社を債権者として支払いを続けることになります。
債権者の合意が必要
別のデメリットとして、任意整理では債権者の合意が無ければ進めることができません。
合意を得られなければ別の債務整理方法を検討しなければならなくなります。
あくまで“当事者の任意で”進めるのが任意整理ですから、債権者が交渉を拒めばそれ以上進めることができないのです。
債権者に任意整理を拒まれた場合、債務者としては以下のような他の債務整理法を検討することになります。
①特定調停
裁判所の関与の元で、債権者と債務者による交渉で債務縮小を話し合います。
ただし特定調停は強制力がなく、やはり債権者の合意が無ければ成立しません。
任意整理を拒んだ相手ですから、特定調停が不成立になる可能性は高いでしょう。
②個人再生
裁判所の厳格な関与の元で債務の大幅な圧縮を行います。
うまく運べば、債務を五分の一程度に圧縮することができ、条件を満たせばマイホームを処分せずに債務整理を行うことも可能です。
③自己破産
借金を弁済できる可能性がない場合に検討対象になるもので、一般的な借金を帳消しにして人生の再出発を目指すことができます。
借金の帳消しを裁判所に認めてもらう必要があり、ほぼ全ての財産を処分しなければならないことや、一定期間就ける職業に制限がかかるなどのデメリットがあります。